かっぽう着(割烹着)は、女性が家事をするときに、衣服が汚れるのを防ぐために羽織って着る服で、明治の後期から昭和の初期にかけて多くの女性が着用していたそうです。
かっぽう着というと、私の祖母が着物の上から羽織っていた真っ白いデザインが頭に浮かびますが、最近では若い人にも好まれるようなおしゃれなデザインの品も販売されています。
三島さんが作るかっぽう着は、古着をリメイクして作るので、1枚1枚個性があり、どれもとても素敵です。
ただ、自分が着る服をつくるというだけでなく、日常の生活の中にあるものにていねいに手を加えて、自らの暮らしを大切にし、よりよいものとして楽しもうという思いが込められています。
今回は集落内外から6名の方に参加いただきました。
お裁縫が得意な方、久々にミシンを使う方、かっぽう着に興味があるなど、さまざまでしたが、皆さん「かっぽう着作りが楽しみ!」とワクワクしながら、この日をむかえました。
まずは三島さんが作ったかっぽう着を色々見せていただきました。
「こんな感じがいいかなあ」
「こういうのも可愛いね」
「色使いが素敵ね」などなど。
みんなでおしゃべりしながら出来上がりのイメージを膨らませました。
皆さんが持参したシャツは、
夫のワイシャツ、自分が着ていたシャツなど色も形も素材もさまざまです。
着なくなった服たちがどんな風にかっぽう着に生まれ変わっていくのか楽しみです。
三島さんが作るかっぽう着は『シャツ型』と『スモック型』の2種類あります。
今回は、シャツを前後逆さまにして使う『スモック型』を習いました。
「シャツを前後に使う?」
はじめは戸惑いましたが、実際に見せていただくと納得。
その発想の転換に驚きました。
おおまかな工程は、
えりぐりのあきを決めバイアステープを着ける
ポケットを着ける
そで口にゴムを入れる
書いてみると工程は少ないですが、裁縫が苦手な私には結構な難関でした。
えりぐりのあき具合を決め、ポケットの位置を決めるのも自分のイメージに合わせていきます。
「自分の思うように作る」
いつも誰かが考えたモノの中から自分好みのモノを選択しているので、このように服と向き合ったことがなく、すごく悩みました。
けれど、その悩みもまた楽しくワクワクするものでした。
皆さんの様子を見てみると、ポケットに使う布やミシン糸の色、バイアステープの選び方にも個性が出ていました。
三島さんのハッとする色使いもあこがれましたが、今回私はぬい目のアラが見えづらい布や色を選び、三島さんが持ってきてくださったボタン、洋服のタグ、リボンなどと合わせて仕上げていきました。
夕方までかかりましたが皆さん、無事にそれぞれのかっぽう着を作り上げていただきました。
タンスの奥で忘れられていた洋服がかっぽう着として生まれ変わりました。
しかも、世界に1着しかないオリジナルの仕事着です。
手ずからつくる楽しみ
古いものに命を吹き込む喜び
そして、みんなでお話ししながら過ごす時間。
「こういう集まりってとてもいいね!」
「またやりたいね!」
それぞれ楽しい時間を過ごしていただけたようでした。
皆さんのおかげで不器用な私もなんとか最後までつくりあげることができました。
私の「オリジナルかっぽう着」を紹介します。
少々えりぐりが広い仕上がりになったけれど、頭からすぽっとかぶることができたので結果的に良かったです。
ポケットを着けるのは、もう少し練習が必要ですね。
せっかくの機会なので、三島さんが作ったシャツ型のかっぽう着もご紹介します!
着古した紳士もののシャツをリメイクしてあります。
アクセントとして、シャツのボタンやタグを飾りに縫い付けてあり、とても素敵です。
色使い、布の選び方、そして、可愛いアクセント。
さすがプロの作家の作品です!
もちろん使い勝手もとてもよいです。
あわただしく過ごす日々の中、自分のためにモノを作る
お金はかけなくても、豊かで充実した時間を過ごすことができました。
かっぽう着を着ると、そでが落ちるのも、服が汚れるのも、気になりませんでした。
初めのうちは、せっかく作ったかっぽう着が汚れないか心配しましたが…
この冬は寒く、台所仕事がつらいときもありましたが、このかっぽう着を着ると暖かく快適でした。
かっぽう着は毎日の家事を共にする相棒です。
家事がおっくうに感じる時も、お気に入りのかっぽう着を着ると気持ちがあがりました。
かっぽう着を通じて、
昔ながらのものを今の暮らしに合うように工夫する、
モノを大切にする、日々の暮らしを楽しく、
豊かにする三島さんの素敵な生き方やたくさんの知恵を教えていただきました。
おいしいごはんをつくれますように。
毎日楽しく仕事ができるように。
次のかっぽう着を作るため、眠っているシャツを探そうと思います。
※ 三島さんが作ったかっぽう着はもちろん販売されています。
興味がある方はご連絡ください。