佐渡市地域おこし協力隊サイト

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なりわい

 岩首集落には、ぞうりやわらじ作りの名人がいらっしゃいます。
夏前の話になりますが、島内の女性2名に布ぞうり作りを体験していただきました。もちろん教えるのは、岩首集落の名人のおばあさんです。
 一般的には「ぞうり」は「稲わら」を編んで作りますが、「布ぞうり」では稲わらの代わりに「木綿の布」などを使います。布でできているため、洗うこともでき、夏には素足ではくと気持ちがよいので、最近愛用する人が少しずつ増えてきているとか。ぞうりをはくと足の指をしっかり使って歩けるので健康にもよさそうです。 また、身近にある布や古着を再利用できるので、一般的な家庭でも取り組みやすいという長所もあります。思い出のこもった服を新たな違う道具として生まれ変わらせ、それを再び身に付けられるという楽しさもあります。
 ぞうりは、足を使って編んだり、「編み台」という専用の器具を使って編んだりと人によって作り方が様々ですが、今回は、足を使って編んでいただきました。
布ぞうり1 (1)ぞうりを自分で作るなんて難しそう…と最初はそう思いがちです。
確かにコツをつかむまでは少し難しく感じますが、慣れてしまえばスイスイと編むことができます。
わからないところは、おばあさんが手取り足取り教えてくれました。
おばあさんは手を動かしながら口も滑らかに動いていきます。
「おばあさんの手は魔法の手ですね!」と生徒さんが驚いていました。

おばあさんは「子供の頃から作っているからね」とおしゃべりしながらスイスイと編み上げていきます。

生徒さんは、おばあさんの無駄のない手の動きに見入っていました。

布ぞうり1 (2)

布ぞうり1 (3)最後の鼻緒やかかとの部分はきれいに作るのは難しいので、おばあさんに手伝ってもらい、なんとか完成しました。いろいろなお話を聞きながらゆったりと取り組んでもらったので、1日がかりの仕事となりました。おふたりとも今回の体験をとても楽しんでいただいたようで、

家でも作ってみます!」
と言って、編み方がわかりにくい「つま先」部分をいくつも編んで持ち帰っていました。

おばあさんは、「わざわざ岩首まで、ぞうりを習いにくるなんて」と苦笑いしますが、いつも快く対応してくださいます。

80歳を過ぎたし、私が教えられることは何でも教えるよ。こうやって新しい人との出会いがあるのも楽しいね」と訪れた人を笑顔にします。

布ぞうり1 (4)
 一昔前まではぞうりやわらじは必需品でした。これらをつくりあげる「手仕事」は、生活に根差した技術として代々受け継がれていました。しかし、生活様式の変化とともにその必要性が薄れ、技を伝えられる人が少なくなっています。里山で暮らす豊かな知恵や技術の伝承が途絶えつつあることは、とても残念なことです。

 一方で、近頃はこういった民芸品の価値が見直されてきています。今回のようにぞうりの編み方を知りたいと言ってくれる人が出て来ていることは嬉しいことです。
私も、少しずつ岩首のみなさんが持つ知恵や技術を学び、伝えられるようになりたいと思っています。そして、いつの日かおばあさんと一緒に布ぞうり教室を開催して、多くの人に魅力を伝えていければいいなと思っています。

岩首の棚田は、海から山へとかけあがるように小さな田んぼがたくさん連なっており、その迫力ある風景は多くの人を魅了しています。

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あまり知られていませんが、展望小屋よりさらに上にも小さい棚田が広がっており、地元の人以外は立ち入ることのない場所があります。今回、そこの環境整備作業が行なわれると聞いて、お邪魔させていただきました。

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集落から車を走らせて坂道を登ること15分。展望小屋よりもさらに上までいくと、いつも見る眺めとは異なる棚田の風景が広がっていました。そこで車から降り、一番奥の水源をめざして山道を小一時間歩きました。細く険しい山道を登りきると、ようやく管理作業のスタート地点に到着しました。地元の農家の皆さんは、棚田を守るためにこんなところまで歩いてきて管理作業をしていたということを知って驚きました。

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そこから男性陣が刈り払い機で草を刈りながら下りていきます。女性陣は機械が届かない水路の際の草を鎌で刈ったり、水路に落ちた草や堆積した小石を取り除きながら進んでいきます。私も女性達の後に続きながら作業のお手伝いをさせていただきました。

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林の中に通された用水路は、土砂で埋まってしまうこともあるそうです。すぐに埋まってしまう部分にはパイプが敷設されていました。自分たちで少しずつ設置したものだそうです。山を下りながら水の流れを眺めていると、皆さんが試行錯誤しながらこの水路を守られてきたということを実感しました。

DSCN5087昔はこの棚田の上にも田んぼがあったというから驚きです。「上の田んぼがなくなったから、その分ここの水が多くなるかと思ったら違ったんだよ。田んぼから田んぼへゆっくりと流れて届いていたんだね。田んぼは自然のダムというのは本当なんだよ」と一緒に作業した方が話してくださいました。

最近よく言われることですが、田んぼはお米の生産だけではなく、土砂崩れを防いだり、貯水機能を持つ機能を持っているのです。実際に田んぼを守っている人たちが整備作業をしながら発した言葉は、同じことを言っていても説得力がまったく違いました。

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足場の悪い場所では体を下に向けて中腰姿勢での作業が続きます。

「食べ物をつくるというのは大変なことだよね」作業しながら何気なく出た言葉も、とても実感がこもったものでした。

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作業はとても大変でしたが、みなさんが時には明るく大きな声で笑い、お互いを気遣いながら作業されている姿が印象的でした。途中、水ぶきを摘む楽しみもありました。

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岩首の棚田は岩首昇竜棚田と呼ばれ、美しい田んぼの連なりと海を臨めることができる絶景スポットとなっています。その美しさを一目見ようと島内外から多くの見学者が訪れます。しかし、この棚田を見た人は多くても、こうした作業を見たことがある人はほとんどいないと思います。

人を魅了する風景は、勝手にできたものではなく、何とかしてお米を食べようと水源を拓いた岩首の皆さんのご先祖の執念で産み出されたものです。そして、今も損なわれずに現在まで続いているのは、集落に暮らしている皆さんが農道や水路の管理、草刈りなど地道な作業を絶え間なく積み重ねて、田んぼを守っているからです。

佐渡は世界農業遺産という大きな看板を背負っています。この財産がどんなに重いものかを垣間見たような気がします。

もし、岩首の棚田を訪れる機会があったら、風景の美しさを見て楽しむだけでなく、真摯に田んぼに向き合っている人々の姿に思いを馳せていただけたら嬉しいです。

 佐渡には稲わらや竹など地域のさまざまな資源を活かした手仕事が受け継がれてきています。岩首集落では、私たちの周りからほとんど消え去ってしまった「ぞうり」や「わらじ」が今でも細々と作られています。そして、これらは、島の鬼太鼓やさまざまな神事に使われていて、佐渡の伝統を支える、無くてはならない工芸品となっています。

 通常わらじは稲わらで作りますが、岩首では、「フトイ」(地元ではオオイとかウウイと呼びます)という植物の茎を使って作る方が結構いらっしゃいます。稲わらよりも繊維に弾力があり、はき心地がよいのが特徴です。

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昨年のことになりますが、岩首に来たのが良い機会だと思い、私も地元の手仕事の先生のおばあさんに教わりながら、ぞうり作りに挑戦しました。左右の大きさを揃えるのはもちろん、つま先やかかとの形を整えるのが難しく、おばあさんたちに手取り足取りをしてもらいながら仕上げました。

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おばあさんたちは小さい子どもの頃から稲わら細工に親しみ、技術を身に着けてきました。おしゃべりしながらも手を休めることなく、次から次へとぞうりやわらじを作り上げていくのは、熟練のなせる技だと思いました。
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今年(令和2年)に入って岩首集落のわら細工名人のみなさんが新聞や冊子に紹介されました。 1月の新潟日報には、わらじ作り名人のみなさんが紹介されました。
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4月には、佐渡文化財団発行の「佐渡の手仕事」という冊子にぞうり作り名人が紹介されています。
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みなさんのお歳は7080代!現役で作り続けています。「この歳になっても働けることがありがたい」とお話されます。やりがいをもって働き続ける姿は、生き生きとしていて、素敵な人生を過ごされているように見えます。私も岩首の人のように、ていねいに年を重ねながら元気に長く働いていけたらいいなと思います。まずは、みなさんからひとつひとつ知恵や技術を教えていただこうと思います。




先日、岩首集落で行なわれているわかめの出荷作業をお手伝いさせていただきました。
生わかめは佐渡に来て初めて食べました。柔らかく、ほんのり磯の香りがします。わかめがこんなに美味しいとは知らずにいました。

このおいしいわかめは、私たちの食卓に届くまでに、たくさんの人の働く手を通っています。

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朝早く、ベテラン男性2人(70代と80代!)が颯爽と船で出港!沖で大切に育てたわかめを収穫してきます。今年は豊漁で、この日もたくさんのわかめを船に積んで戻ってきました。

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漁港では、女性たちが船を出迎え、船に積んであるわかめを木箱に入れて作業場に運びます。わかめは思っていたより重さがありましたが、みなさん軽々と作業を進めていきます。

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収穫したわかめの大部分は、乾燥わかめにして出荷しています。

作業は、まず最初に陸揚げしたわかめを水で洗い、次に茎とめかぶを切り、最後に吊るして乾燥庫へ入れます。皆さん慣れた手つきで作業を担当しつつ、進捗を見ながら持ち場を変えてテキパキと働いていました。

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私は、わかめを吊るす作業をお手伝いしました。洗濯物を干すよう順番に竿につるしていきます。わかめの大きさは大小様々です。乾きやすいように幅の広い大きなものは吊るす隙間をあけたり、端に吊るすなどしていきます。
すべての竿にわかめを吊るし終えたら乾燥庫に移し、乾燥させます。
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作業の合間の休憩。みんなでおしゃべりしながら、こびり(佐渡弁でおやつ)をいただきました。

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休憩のあとも作業を続け、半日で乾燥庫が満杯になる量のわかめのカーテンができました。

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この日は、生わかめも出荷しました。手際よく切り揃えられたわかめは、発砲スチロールにきれいに詰められて市場へ出荷されました。

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乾燥後のわかめは、作業小屋の2階で袋に詰められます。乾燥したわかめに、少しだけ蒸気を当てて、きれいに折り曲げ、きっちりと長さをそろえて袋に入れていきます。

ひとつひとつ丁寧にすべて手作業でおこなわれ、袋詰めされていました。

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ここで働いている方は70代以上で高齢者と呼ばれる年齢の方々ですが、高齢者と呼ぶのが失礼なほど元気で生き生きと働いています。みなさんを見ていると、歳を重ねても働くことの大切さを感じます。

おいしいわかめをいただけるのは、佐渡の里山里海の恵みとそこでたくましく働くみなさんのおかげです。毎日感謝しながら、春の旬を楽しみたいと思います。


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