5月21日、快晴の日曜日。
北鵜島集落において「車田植」が行われました。

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車田植が行われる田んぼ


北鵜島の北村家に代々伝わるもので、毎年5月の田植の最終日、大安の日に行われています。
ぐるぐる車輪のように広がってゆくように苗を植えるため、「車田植」と呼ばれており、日本の田植の古い型を長い長い歴史と共に現代に受け継いでいます。
昭和53年には、国の重要無形民俗文化財に指定されました。

以前は日本各地でみられていましたが、現在はここ佐渡市と岐阜県高山市だけに残されています。

そんな貴重な車田植の準備から当日までをご紹介します。


こちらが車田植の習わしを守り続けている北村佐一さん。
北鵜島にある民宿「やま佐荘」のご主人でもあります。
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前日に当日植える苗の苗縛りを行います。
稲わらを用いぐいっと苗を縛ります。
これ覚えておくと何を縛るにしてもいろんなのに代用できるよ~
なんせ稲わらだとタダだからね~と佐一さん。
カンゾウの苗も同様の縛り方です。去年より少しうまく縛れるようになったような・・・
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二人で縛り続けようやく完成。
苗が乾くのを防ぐために田んぼに沈めて帰ります。


翌日。
当日の朝5時より、関係者や来場者に振る舞うためのおにぎりを握ります。
北村さんのご姉妹が、来てくれた方のために毎年準備しています。
今年も100個以上の赤飯や白米のおにぎりを握りました。

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お姉さんの山岸美幸さんは車田植の田植唄の唄い手でもあります。
去年は少し体調を崩されていたようでしたが、今年はとてもお元気そう。
辛そうだった喉も今年はばっちりのご様子。
無形文化財に登録された頃からおにぎりなどを振る舞っているそうですが、やはり準備は大変なようで、体調が悪くなったら振る舞いはできなくなるかもなあ・・とおっしゃっていました。

このおにぎり三個と三把の苗、お神酒を北村家の神殿に供え、礼拝して豊作を祈ります。
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その後、車田植が行われる田んぼへ移動します。
車田植の開始まで、唄い手も早乙女も田んぼで待機中。
早乙女は、佐一さんのご姉妹や近隣集落の方など毎年決まった方がされているそうです。

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佐一さんもポーズ!(ちょっとぶれてます・・)
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9時より車田植の儀式が始まりました。
礼拝し、田へお神酒を供えます。

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神殿に供えられていた三把の苗を一把ずつ3人の早乙女に渡します。
早乙女が車田の中央に集まり、その苗を三つがまえに植えます。
この中心に田の神様がおりてくると言われています。

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その後はそのまわりに一株、二株、三株と後ずさりしながら植えていきます。
畦では先ほどおにぎりを握っていた美幸さんが田植唄を唄います。

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よく伸びるとても素敵な歌声です。
唄と一緒に車田植も進んでいきます。
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美幸さんは田植唄の他に海府甚句なども織り交ぜながら唄を唄ってくれました。
唄を唄うと素朴な気持ちになるんだよ~、昔の曲は素朴な歌詞ばかりなんだよ~と美幸さん。
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目の前に海と青空が広がる田んぼからの景色は、本当に美しいです。
空にはつばめがたくさん飛び回っています。

マスコミの方もたくさん取材に来ていました。
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この日は佐渡島内でロングライドも開催中でした。
参加者の皆さんも何名か見学に来てくれました。
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大勢のマスコミに囲まれるロングライド参加者の方


車田植終了後、参加者におにぎりやおかずが振る舞われます。
今日のおかずはきゅうりのからし漬け、たくあん、スゲナの佃煮、塩イカ。
田んぼでみんなで食べるおにぎりやおかず、とってもおいしいです。
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佐一さんも早乙女の皆さんも並んでおにぎりを食べています。
大変お疲れ様でした。

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たくさんの唄を知っていて、唄が大好き。素敵な唄声を聞かせてくれた美幸さん。
早乙女として40年、田植唄を唄って約10年の大ベテランです。

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この田植唄を途絶えさせたくない、引き継ぎ残していきたいと強くおっしゃっていました。
今後、妹さんへ引き継いでいきたいという気持ちをお持ちのようでした。

北村家の皆さんにとって、車田植の習わしは手間や労力がかかるものであることも事実です。
実際、去年今年と二年続けて立ち合い、体力的に辛そうな場面を何度か見かけることもありました。
それでも、大勢の人達に囲まれて車田植について話す顔は皆さんとても嬉しそうで、誇らしげで、そんな姿はとてもかっこいいなと思います。
こうやって家に代々続く習わしをずっと守り、続けてこられていることは単純にやっぱりすごいことです。

辛い部分はあっても、こうやって見に来てくれる人がいて、伝えられることが原動力になり、また来年もやろうという気持ちに繋がっているのかな、とそんな姿を見て感じていました。

北鵜島の車田植は毎年5月中旬、大安の日に行われています。
北村家の皆さん、早乙女の皆さんの勇姿をぜひいつか見に来てくださいね。
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