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佐渡の特産品の1つに柿があります。

そのまま食べるのもおいしいですが、「干し柿」にすると甘味が凝縮され、生とは違ったおいしさが生まれます。
秋にたくさん柿をいただいたので、冬に向けて、地元岩首のおばあさんにコツを教えてもらいながら、干し柿をつくることにしました。
おばあさんから昔のお話を聞きながら、1玉1玉と皮をむいていきました。

佐渡の南部では、古くから柿の栽培が広く奨励されて、「おけさ柿」のブランドを持つ名産地になりました。多くの農家が、稲作の傍ら、柿を栽培し、このようにたくさんの干し柿を作って都市に向けて送り出してきたと聞きます。
都会で売るためには、おいしさだけでなく、見た目もきれいにしあげることが求められてきました。品質の良い干し柿を確実につくるために、おばあさんも、いろいろな研修会に出かけていって、自分なりに研究を重ねて技術を身につけてきたそうです。そうやって、少しずつでもお金を稼ぎ、生活を支えてきました。

皮を剥くこと半日。こんなにたくさんの柿の皮むきをしたことは生まれて初めてです。)
わが家の軒下にもついに「柿のカーテン」ができました。

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何日か経った後、おばあさんが様子を見に来てくれて、次の作業を指示してくれました。

ただ干しておくだけではなく、途中柿を揉みました。そうすることで、柔らかくおいしく仕上がるそうです。

完成する直前に、何個かカラスに食べられてしまいましたが、それでも何とか無事に完成させることができました。
できあがった干し柿を食べてみると、やわらかく優しい甘さでした。

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柿や干し柿は今では佐渡島の代表的な名産品です。
この他に、干し柿をおもちをつくときに一緒に練り込んで作る「柿もち」があります。

実は私は佐渡に来るまでは、おもち自体をあまり食べませんでした。

けれど、ここに来てから、たくさんいただき、それがどれもとてもおいしいので、好きになりました。

そして、この柿もち。
おもちをかみしめると柿の甘さと香りが口の中に広がり、そのおいしさに感動しました。
お米もおもちも柿も佐渡のものはとてもおいしいです。
そして、これらを組み合わせた柿もちは、とてもすぐれた食べものです。
私は佐渡に来るまではこの「柿もち」を知りませんでした。しかし、これもまた佐渡らしい伝統食だと思いました。
いつかは自分でも作ってみたいと思っていました。

おばあさんが干し柿がうまくできたら、柿もちもつくってみようかとおっしゃったので、せっかくの機会だから作り方を教わることにしました。
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柿もちをつくるときは、もち米と干し柿を一緒に入れて蒸し上げていきます。

熱が通って蒸気が上がってくると、部屋の中が柿の甘い香りでいっぱいになります。

蒸しあがった後は、いよいよもちつきです。
もちつき機で米をつきながら、上表面にある干し柿を下へ下へと少しずつ押しつけながら、練り込んでいきます。

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ここで、失敗すると、もちと柿がうまく混ざらなくて、おいしいものにならないそうです。

作ってみて、たくさんの干し柿を使うことに驚きました。柿の産地だからこそできる贅沢な味だと思いました。

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おばあさんの手ほどきはいつも上手です。おかげでおいしい柿もちができあがりました。

初めて作ったのに「上出来だよ」とおばあさんに褒めてもらえる味でした。それから、柿もちを作ることが楽しくなって、いろいろな人にこの味を自慢したくなりました。
郷土料理はその土地の気候や風土の中で育まれてきた文化そのものです。
し柿や柿もちにも、先人たちの生活の知恵がぎっしりと詰まっています。
島外から来た私にも、おばあさんのいろいろな知恵を教えてもらえることは、とてもありがたく、貴重な経験です。
私ももっと技術を深めて、この食文化を大切に受け継いでいきたいと思いました。