随分前のことになりますが、岩首集落のおばあさんから『もんぺ』の作り方を教えてもらいました。
もんぺは、昔は野良仕事には欠かせない仕事着でした。洋服が普及してから、着る人があまりいなくなりましたが、腰回りがゆったりしていて動きやすく、すぐれた衣服です。
最近では若い人が現代風のおしゃれなものを開発するなど、その価値が見直されてきています。もんぺをはいているおばあさんを見かけたときに、その姿がとてもかわいいと私も思いました。
昔から愛用されてきた服には、今の服にはあまりない温かみがあって、機能もすぐれているものが多くあります。時代の流れの中で消えていくには寂しい文化だと思います。
昔は、自分でもんぺをつくっていたと聞き、せっかくの機会なので実際に作り方を教えていただきました。
もんぺを縫う布には、おばあさんの着物を利用しました。1着の着物から2人分のもんぺを縫うことができます。
最近の『もんぺ』はウエスト部分にゴムが入ったものが多いですが、今回は、おばさんが若いころから実際に愛用してきた、前後を紐で結んで締めるはかま型の本格的なもんぺです。
裁縫が苦手な私。
最初は「難しそう…完成するのだろうか…」と思っていました。
けれど、実際には直線裁ちと直線縫いで作れるので、思っていたよりもスムーズにできあがりました。 おばあさんが若かったころは、実家に帰省した時に新しい反物でもんぺや上っ張り(上着)を縫ったそうです。
日本がまだ貧しかった時代。
女性たちは毎日休むことなく早朝から夜遅くまで農作業や家事に勤しみました。
自分のために身に着ける物を仕立てるような時間が持てるのは、帰省した時だけだったのかもしれません。
「実家に帰る時期をいつも楽しみにしていたよ」
時にはそんな昔の懐かしい話をしながら、少しずつもんぺを縫い上げていきました。
朝から作業を始めて夕方にはなんとか完成しました。
「20年ぶりくらいにもんぺを作ったよ」
とおばあさん。
もんぺは着なくなった着物を無駄なく活用でき、家庭菜園や掃除の際など今の暮らしの中にも取り入れやすいと思います。
おばあさんが使っていた着物に手を加えることで、私が着るもんぺに変身しました。
生まれ変わったものを、これから大切に受け継いで身に着けようを思います。
今は、着る物は既製品を購入すれば簡単に手に入れることができます。
そんな時代の中でも、おばあさんのモノを大事にする心や、知恵と工夫を凝らした暮らし方は、たくさんのことを教えてくれます。