佐渡市地域おこし協力隊サイト

佐渡市地域おこし協力隊全メンバーによる活動報告のサイトです

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世界農業遺産

昨年から佐渡のおばあさんの知恵や技術を多くの方に知っていただきたいとの思いで仲間2人と「ばあとまご舎」という活動を始めました。その1つとして、今年も、おばあさん達が作るおいしい野菜を都会に住む方に販売いたしました。

7月末、岩首、赤泊、羽茂木戸集落の女性たちが丹精込めて育てた夏野菜の詰め合わせを、東京などにお住まいのお客さまの元へ送りしました。
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長雨と日照不足で野菜の生育がどうなるかと思っていましたが、私の心配をよそにたくさんの野菜が集まりました。
昨年までは岩首と赤泊の皆さんが取り組んでいましたが、今回から羽茂の木戸の皆さんが新たに加わりました。
初めて取り組む木戸集落では、皆さんが野菜を持ちよって箱詰めをおこないました。会場となった納屋には、きゅうり、ナス、ピーマンなど定番野菜だけでなく、大葉、ミョウガなど薬味にぴったりの野菜も加わって、夏らしい島の旬の味覚が所せましと並べられました。
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「開けた時に『わぁ~きれい』と言ってもらいたいね」
「木戸の野菜をたくさん食べて欲しいね」
などなど。

皆さん1人1人の『受け取った人に喜んで欲しい』という思いを野菜と一緒にして箱に詰めていきました。
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段ボールの一番上には、夏の食卓のしつらえにと笹の葉を添えました。
届いた方の食卓が風情あるものになったことでしょう。
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岩首と赤泊の方々もそれぞれで箱詰めをおこないました。
「今年はあまり採れなくて申し訳ない」と言いつつ、箱にはたくさんの野菜が詰められていました。
手作りマスクや折り紙細工も添えていました。
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これらの野菜の詰め合わせには、おばあさんたち1人1人の思いを込めた手書きのお便りを添えています。
お便りには、集落の様子や野菜のおいしい食べ方などが書かれています。
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お客さまからもお返事をいただきました。
「おばあさんから元気をもらいました」
「子供が嫌いな野菜をモリモリ食べるので驚きました」
「早く佐渡に行きたい!」
などと嬉しい言葉が並びます。
おばあさん達も新しい都会の「まご」からの返事が来るのを楽しみにしています。

また、今回は、お野菜を買っていただいたお客さまを対象に、オンライン料理教室を開催しました。
先生は岩首集落のおふたりです。

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料理教室では、お届けした野菜を使って、集落の皆さんが普段作っている料理を紹介しました。先生のおふたりは始めこそ緊張した様子でしたが、後半は慣れた様子で予定になかった品を追加で教えるなど活発に取り組んでいただきました。
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動画を視聴された方からは

「フライパンで焼きナスを作る方法を試してみます!」

「みなさんのほのぼのした雰囲気が良かったです」

などの感想をいただきました。

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最後に先生となったおふたりから、

「この状況が落ち着いたらいつでも佐渡に遊びに来てください」

と言葉が添えられました。

今夏は来島できず寂しい思いをしていた方が多かっただけに、

「あの言葉がうれしかった。必ず行きます!」

という喜びの声も聞こえてきました。

新型コロナウイルスの影響で暗い話が続いていますが、オンラインで佐渡と都会の皆さんをつなぐことで、明るい話題をつくることができたのが嬉しかったです。


おばあさんたちの中には、初めての産直活動で戸惑う方もいましたが、思いのほかお客さまからの反応が良かったので、今では「次は何を送ろうか」と楽しそうに話しています。
佐渡にはたくさんの魅力があります。里山の暮らしもその1つではないでしょうか。

都会に住む方に島の元気を届けることが、皆さんのやりがいにつながっていくといいなと思っています。
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岩首の棚田は、海から山へとかけあがるように小さな田んぼがたくさん連なっており、その迫力ある風景は多くの人を魅了しています。

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あまり知られていませんが、展望小屋よりさらに上にも小さい棚田が広がっており、地元の人以外は立ち入ることのない場所があります。今回、そこの環境整備作業が行なわれると聞いて、お邪魔させていただきました。

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集落から車を走らせて坂道を登ること15分。展望小屋よりもさらに上までいくと、いつも見る眺めとは異なる棚田の風景が広がっていました。そこで車から降り、一番奥の水源をめざして山道を小一時間歩きました。細く険しい山道を登りきると、ようやく管理作業のスタート地点に到着しました。地元の農家の皆さんは、棚田を守るためにこんなところまで歩いてきて管理作業をしていたということを知って驚きました。

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そこから男性陣が刈り払い機で草を刈りながら下りていきます。女性陣は機械が届かない水路の際の草を鎌で刈ったり、水路に落ちた草や堆積した小石を取り除きながら進んでいきます。私も女性達の後に続きながら作業のお手伝いをさせていただきました。

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林の中に通された用水路は、土砂で埋まってしまうこともあるそうです。すぐに埋まってしまう部分にはパイプが敷設されていました。自分たちで少しずつ設置したものだそうです。山を下りながら水の流れを眺めていると、皆さんが試行錯誤しながらこの水路を守られてきたということを実感しました。

DSCN5087昔はこの棚田の上にも田んぼがあったというから驚きです。「上の田んぼがなくなったから、その分ここの水が多くなるかと思ったら違ったんだよ。田んぼから田んぼへゆっくりと流れて届いていたんだね。田んぼは自然のダムというのは本当なんだよ」と一緒に作業した方が話してくださいました。

最近よく言われることですが、田んぼはお米の生産だけではなく、土砂崩れを防いだり、貯水機能を持つ機能を持っているのです。実際に田んぼを守っている人たちが整備作業をしながら発した言葉は、同じことを言っていても説得力がまったく違いました。

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足場の悪い場所では体を下に向けて中腰姿勢での作業が続きます。

「食べ物をつくるというのは大変なことだよね」作業しながら何気なく出た言葉も、とても実感がこもったものでした。

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作業はとても大変でしたが、みなさんが時には明るく大きな声で笑い、お互いを気遣いながら作業されている姿が印象的でした。途中、水ぶきを摘む楽しみもありました。

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岩首の棚田は岩首昇竜棚田と呼ばれ、美しい田んぼの連なりと海を臨めることができる絶景スポットとなっています。その美しさを一目見ようと島内外から多くの見学者が訪れます。しかし、この棚田を見た人は多くても、こうした作業を見たことがある人はほとんどいないと思います。

人を魅了する風景は、勝手にできたものではなく、何とかしてお米を食べようと水源を拓いた岩首の皆さんのご先祖の執念で産み出されたものです。そして、今も損なわれずに現在まで続いているのは、集落に暮らしている皆さんが農道や水路の管理、草刈りなど地道な作業を絶え間なく積み重ねて、田んぼを守っているからです。

佐渡は世界農業遺産という大きな看板を背負っています。この財産がどんなに重いものかを垣間見たような気がします。

もし、岩首の棚田を訪れる機会があったら、風景の美しさを見て楽しむだけでなく、真摯に田んぼに向き合っている人々の姿に思いを馳せていただけたら嬉しいです。

新しい年を迎えました。今年は雪が少ない佐渡です。

岩首集落では昔から守り続けられている小正月行事(賽の神(さいのかみ、せいのかみ)、どんど焼き、鳥追い)がおこなわれています。いずれも五穀豊穣や無病息災を願って続けられてきている行事です。これらの行事には、集落の子供たちが大きな役割を果たしています。

1月14日「賽の神」がおこなわれます。これは厄払いの行事で、子供たちが各家の前で一斗缶や空き缶を叩きながら次の文句を唱えます。


賽の神かんじん とうどや さんぎりちょう 大もうけ 小もうけ  

あっちの家は繁昌し こっちの家は上作し 

銭も金もわくわく 賽の子は13人 銭も金もわくわく


集落の大人たちは今でもこの文句をスラスラと唱えられます。子供の頃の記憶は、何十年経っても残っているんですね。 

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昔は、家々の壁を叩いていたそうですが、今は壁の代わりに缶を叩きます。
一生懸命叩くので、缶がへこんでいきます。

岩首郷土史によるとこの行事は、明治の頃から始まったそうです。集落の大人たちが子供だった頃は、男子中学生が担っていたそうですが、子供が少なくなった今は小学生も加わっています。

供たちが回ってくると、各家ではお菓子や果物などを渡します。昔は、お茶碗にお米を入れ渡していたそうです。お米が貴重品だったことがうかがえます。

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集落全戸を回ると日が暮れます。そんな中、缶を叩く音と子供たちの文句が響きました。

翌日15日は「どんど焼き」です。島内ではトウドヤとかトウライヤと呼び名がいろいろあります。岩首では、7日に子供たちが集落の家々を回り、飾ってあった松やしめ縄を集め、それらを焼きます。

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この火で焼いたお餅とイカを頂きました。この火で焼いたものを食べると病気災難を除けると言われています。

最後は、どんど焼きの灰に水を加え炭を作り、その場にいる人の顔に塗っていきます。大人も子供も関係ありません。顔中に塗られます。子供たちに混ざって大人も加わり大騒ぎです。これも健康を願っておこなわれる立派な習わしです。

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炭で黒くなった顔で家路につきました。
鏡を見て驚きましたが、今年は元気に過ごせそうです。

16日は「鳥追い」です。田畑を鳥の被害から守ることを祈念して行われます。朝まだ暗い430分、子供たちが集落を3周し、最後は神社で唱えます。

京の鳥と 田舎の鳥と 渡らぬ先に 七草あてて トホンボー
四郎左エ門の田の畦に 白い黒い寒鴉 追うて頼む 田の神さん トホンボー
十六日は 月の出 粉餅のか欠片は 今朝ばかり トホンボー

小正月行事は子供たちの役割が大きく、それを集落の大人たちが見守り、支えています。こうして昔からの年中行事を集落が大切にし、受け継いでいくんだと感じました。これからもこの農村文化を守り続けてほしいと思います。

佐渡めぐり塾とは…

佐渡市の委託事業で、佐渡生きもの語り研究所と地域おこし協力隊が共同企画する、世界農業遺産について親子で楽しく学ぶ体験プログラムです。

 

昔から伝わる民話があり、田んぼを守りながら貴重な藁を使う暮らしが今でも続けられている達者集落が、今回の舞台になりました。

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まずは、
「むかーしむかし、とんと昔にあったとさ…」

生まれも育ちも達者集落である85歳のおじいちゃんから、集落にまつわるお話を聞きました。

『安寿と厨子王』『山門洞クシキ』という2つの民話も聞きました。
お話に出てくる、「逢う坂」「お地蔵さんの清水」「山門洞」などは、今も集落に残っています。

 

それらをポイントに集落内を歩くスタンプラリーに出発!


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大事なポイントや民話が描かれている巻物マップに、子供たちはわくわく!
(スタッフの手作り!がんばった甲斐がありました!)


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ポイントでスタンプを押してもらい、アイテムをゲットしていきます。


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「もっと歩きたかった~」という声もありました。


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昼食。
はぜ架けしたお達者米と、お母ちゃんたちの手料理の数々。
サザエご飯、きのこ汁、煮しめ、ぜんまい炒め、…どれも美味しくてお腹いっぱい!
ごちそうさまでした!


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午後いちばんは、藁についてお勉強。

漢字からわかるように、「」は「くらい価値が」だったそうです。


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昔、日常的に使われていた藁で作られた様々な道具。

編む技術がすばらしいです!


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いよいよ、子供も大人も初めての藁草履作りの時間。

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苦戦しながら、手取り足取り教えてもらいながら、なんとか親子で両足分完成…したかな。
「不格好でも履ければ草履だよ~」とお母ちゃんは言います♪

教えるお母ちゃん達はイキイキとしていました。
若い人との交流がとても楽しくて、元気をもらったそうです。

 

藁を手に入れるには田んぼの稲作を維持していかなくてはなりません。

田んぼを守る事は、生活そのものや技術など暮らしを守る事にもつながります。

世界農業遺産、ジアスは奥が深いですね。

達者集落のみなさん、大変ありがとうございました。

 

次回:20183月新穂潟上集落にて(予定)


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